こんにちは!
清晏(せいあん)です。
今回の記事は、毛筆書写技能検定1級に合格した私が
毛筆書写技能検定1級に合格したい方に、必見!おすすめの教材を紹介します
というテーマでお送りしていきます。
毛筆書写技能検定1級に合格している人ってどんなテキストで練習しているの?
毛筆書写技能検定1級はどんな古典作品が出題されるの?
というお悩みを抱えている方のお役に立てるかと思います。
それでは、早速本題に入っていきましょう。
【大前提】過去問を確認することから始めよう
毛筆書写技能検定に合格するためには、一番初めに過去問を確認することが大切です。
目的としては、大きく分けて
- 試験の出題形式や傾向を理解する
- 試験範囲や出題内容を把握し、練習するポイントを把握する
の2つがあります。
毛筆書写技能検定は出題形式が大きく変わることはほとんどありませんし、出題される古典も出やすい作品が大方決まっています。
つまり、過去問を確認することが合格への最短ルートになります。
過去問は一般財団法人 日本書写技能検定協会 [ 硬筆書写技能検定・毛筆書写技能検定実施団体 ]のホームページで購入することができます。
また、私は「毛筆書写検定の手びきと問題集」という名前の冊子を数冊使用して過去問対策をしておりました。
そうすると、10回分ほどの傾向をみられるので、それを解くだけでも良い勉強になります。また、理論試験に関しては試験当日、数年前と同じ問題が出題されたこともありました。
こちらのテキストは2023年12月時点でAmazonでは見つけられませんでしたが、メルカリには出品されていることもあるのでチェックしてみると良いと思います。
【基本の1冊】毛筆書写検定の全体像はこの一冊で捉える
私は、毛筆書写技能検定に向けた練習の8割~9割は古典の臨書でした。
古典といっても何種類も作品があるので、練習を開始した頃は、どの古典を臨書すればいいのか、又、どの順番で臨書をしていくと練習がスムーズに進むのか、悩んでいました。
その時、参考になったテキストがこちらです。
【必修】楷書は「初唐の三大家」からおさえる!
「毛筆書写検定の臨書」を一通り臨書して全体像をつかめたら、次は1つ1つの古典作品に向き合いながら臨書していきます。
広く浅く、の臨書から、狭く深くの臨書に移行するということです。
まずは初唐の三大家と呼ばれる、
- 欧陽詢 (おうようじゅん)
- 虞世南 (ぐせいなん)
- 褚遂良 (ちょすいりょう)
の楷書作品をみていきましょう。
九成宮醴泉銘
楷法の極則ともいわれている九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)は欧陽詢の作品です。
九成宮醴泉銘の特徴としては
- ゆるみがなく、引き締まった線
- 切り込むような鋭い起筆
- やや縦長かつ右上がりの字形
- 右払い・ハネが小ぶりで鋭い
- 縦画と横画は
- 縦画と横画がつかず離れず(不即不離)
といったものがあります。
孔子廟堂碑
孔子廟堂碑は虞世南の作品です。
九成宮醴泉銘と比較すると、
- 柔らかい線質
- 縦画・右払いが長い
- 字の中、偏と旁の余白が広い
- 点画に丸み(ふくらみ)がある
- 起筆と終筆が控えめ
という特徴があります。
雁塔聖教序
雁塔聖教序は褚遂良の作品です。
雁塔聖教序の特長としては
- 全体的に細身ながらも、抑揚・粘り、緩急・強弱の変化に富む線質
- 行書のような柔らかさがある楷書
というものがあります。
九成宮醴泉銘・孔子廟堂碑に比べると、字形や線質がバラエティに富んでいるので、個人的には楷書の中では一番苦戦しました(^_^;)
特に「無」という字が頻出するので、何度も繰り返し臨書をしていました。
その他の重要な楷書作品
自書告身
自書告身は顔真卿の作品です。
自書告身の特徴としては、
- 筆を垂直に立てて書き(=直筆)、向かい合う縦画が外側に膨らむように書く(=向勢)
- 縦画が太く、横画は細い
- 起筆は蚕の頭、右払いの収筆は燕の尾のように書く(=蚕頭燕尾)
というものがあります。
初唐の三大家と比較すると、ハネや右払いが個性的で、見ただけで「これは顔真卿の作品だ!」と分かるくらい特徴的な書風です。
※こちらは天来書院のシリーズです。ほぼすべての文字に骨書(硬筆で書き方を示したもの)が付き、文字と筆順、現代語訳、臨書作品制作におすすめの部分を掲載、紹介するなど、細かく説明がなされています。
龍門二十品
中国河南省の龍門に北魏時代の楷書の名品、造像記が数多く残されているのですが、その中から優れた名品として選ばれた二十作品が「龍門二十品」と呼ばれます。
その中でも、「牛橛造像記」はメジャーな古典なのでしっかり臨書をしておきましょう。
牛橛造像記の特徴としましては
- 横画・縦画の起筆・終筆が鋭く、はっきりしている。
- 固く引き締まった線質
- 整った楷書ではなく、野性的で力強い書風
といったものがあります。
行書は王羲之の「蘭亭叙」が定番!
蘭亭叙
王羲之の書の中で最高傑作と言われているのが「蘭亭叙」です。
特徴としましては
- 流れるような筆遣い
- 文字造形や表情が規則的ではなく、1字1字が変化に富んでいる
- 楷書とは異なる書き順になることがある
というものがあります。
草書の代名詞は孫過庭の「書譜」!
書譜 孫過庭
書譜は私が草書を習い始めた頃に一番臨書した古典です。
というか、草書の臨書の殆どをこの書譜に費やしていました。
書譜の特徴としましては、
- 王羲之の書風を基にした緩急ある書きぶり
- 側筆(筆を寝かせて書く)
- 節筆(紙の折り目に筆をぶつけることで、節ができる)
-
断筆(転折部分が切断されて不自然な形になる)
というものがあります。
草書は理論試験でも出題されるのでしっかり勉強しておきましょう。
十七帖
蘭亭叙に続き、こちらも王羲之の作品です。
- 文字の上部を左右に幅をとり、下部は引き締める
- 偏と旁のどちらか一方を大きくするor上にあげる
- 文字の上部と下部で大胆に中心線を移動させている
- 筆の弾力を活かした角張った転折と不自然な転折(断筆)
といった特徴があります。
断筆は孫過庭の書譜でもよく見られますが、これは孫過庭が王羲之の書法を引き継いでいるからです。
真草千字文 智永
真草千字文は智永の作品です。
真書(=楷書)と草書の2つの書体で書かれているのでこのように呼ばれています。
- ゆったりとした運筆と骨力がありながら丸みのあるしなやかな線
- 側筆を活かした太く弾力のある線
- 重みがあり、安定感のある字形
真草千字文も王羲之の書法を正統に引き継がれたものと考えられています。
臨書の対策として「隷書」も学ぶ
礼器碑
礼器碑が誰の作品かは、はっきりとわかっていません。
しかしながらその書風は隷書の正統派とされるほど名高いものとなっております。
- 洗練された、無駄のない清々しい書風
- 横画が強調された扁平に近い四角形
- 線は引き締まっており、やや細身
- 直立に近い側筆
- 八分隷(はっぷんれい)
といった特徴があります。
八分隷とは、隷書の書体の一つで、波磔(はたく:終筆を波打つように上に引き上げる用法)があります。
ちなみに、波磔が見られない初期の隷書を古隷(これい)や秦隷(しんれい)いいます。
曹全碑
曹全碑は礼器碑と並んで正統派とされている隷書です。
曹全碑の特徴は、
- 左右均衡
- 形が扁平
- 伸びやかな波磔
- 礼器碑と比較すると線がふくよかで柔らかい書風
というものがあります。
仮名対策は「高野切」から始めるのがおすすめ
高野切 第一種・第二種
私は書道歴は20年を超えますが、仮名は検定試験を受けることを決めてから初めて取り組みました。
始めは何から練習すれば全く分かりませんし、何と書いてあるすら分からない状態でした。そして、当時習っていた先生からおすすめされたのがこの「高野切」でした。
仮名に慣れるまでは、この高野切に集中して臨書していたのですが、そのおかげか練習を始めてから3年ほどで1級を取得できました。
関戸本古今集
関戸本古今集は藤原行成によって書かれたものとされています。
※現在では、11世紀後半の能書家による書写という説もあります。
特徴としましては、
- 小ぶりな文字が重なり合うよう、詰め気味に書き連ねられている
- 繊細ながらも粘り強い線質
- 字形は長め
- 字形の端正さより、運筆の緩急の変化に重点を置いている
- 筆管を手前に倒しつつ、同時に俯仰法(ふぎょうほう:筆の進む方向に筆を倒すように書く用法)を用いる
理論試験対策におすすめの1冊
書写技能検定試験に合格するためには、理論の勉強が必須です。
内容としましては、書の歴史や作品と作者、仮名や草書の読み方などを答える問題が出題されます。
例年、出題傾向が大きくは変わらないので、暗記が得意な方は、過去問を数十回分集めて覚えるというやり方でも乗り切ることができるかもしれません。
私の場合は、過去問演習に加え、こちらのテキストを使って歴史の流れを学びましたが、過去問で得られた断片的な知識が整理されていきました。
ポイントを絞って集中して取り組むことがカギ!
以上、毛筆書写技能検定1級に合格したい方におすすめの教材を紹介していきました。
古典作品自体は、こちらで紹介したもの以上にたくさんありますが、まずは有名どころからおさえていくことが大切です。
また、王羲之があらゆる古典作品のルーツになっているので、その流れを引き継いでいる作品を学んでいくと良いでしょう。
それでは、今回はこのへんで(^^)/