こんにちは!
清晏(せいあん)です。
今回の記事では、「個性」についてお話していきたいと思います。
皆さんは、綺麗な字はどれも同じに見えるタイプでしょうか?
どれも同じに見える方からすると、「字が綺麗=個性がなくなる」と思ってしまうこともあるかもしれませんね。
しかし、練習をしていくと分かると思いますが、綺麗な字は人の数だけあることに気づきます。
また、字の綺麗さと個性は両立させることが可能です。
今回はその理由も含めて、お伝えしていきたいと思います。
①綺麗な字に個性がないと感じる理由
綺麗な字が全て同じに見えるのには主に2つの理由があります。
1つは、綺麗な字には「普遍的法則」があり、いずれもそのルールを守って書かれているからです。
例えば、どんな字にも「余白」や、トメ、ハネ、ハライが存在しています。こうした字の普遍的な要素に対して技術を磨き続けると「ルール上の字の美しさ」はどうしても一つに集約されていきます。
ある意味、綺麗な字が全て同じに見える人は、無意識で「綺麗な字の法則」を見抜いていると考えられます。
2つ目の理由は、綺麗な字のレパートリーを知らない、というものです。
ざっくり「綺麗な字」と認識できても、何故それが綺麗なのかを論理的に説明できないのは、単純に綺麗な字の種類を細かく知らないからです。
また、現時点で綺麗な字の種類を知らなくとも、これからインプットしていけば問題ありません。
②本当の個性って何?
字の個性は、「これが私の字」というものが初めから決められているわけではなく、自ら意図的にアクセントをつけるものでもないと、私は考えています。
「守破離」という言葉があるように、字に関しても、最初は綺麗な字を書くための法則や技術を学んでいきます。
そのうえで、自分が「綺麗だな」「好きだな」と感じる字をどんどんインプットしていき、その中でも必要なエッセンスだけ取り出して、自分の字として表現できた字が「個性的な字」だと捉えています。
一見、論理的に「これが良い、あれは良くない」と決めているように見えても、その論理自体が好き嫌いに影響を受けており、
結局のところ、人間の感情が他の人とは違うという「偏り」を生み出し、その「偏り」が「個性」になっていくのだと思います。
よって、「綺麗なだけでなく、自分らしさを出さなければ…」と頭を悩ますのではなく、まずは自分の気持ちに素直になって、好きな字をどんどん模倣し吸収していくことを楽しみましょう。
③模倣することの大切さ
書道では「臨書」といって、手本をそのままコピーしたかのように書く練習方法があります。
この臨書は、何よりも重要視される基本的な練習です。
ペン字も同じで、最初は手本を真似ることから始めます。
この段階では個性がどうこうなどと考える必要はありません。むしろ、頭を空っぽにしてド正直に見たまんまの字を書き写すことが大切です。
字の固定観念を自分の脳内から一掃して、新たに綺麗な字をインストールしてください。
また、一つのお手本に固執する必要はなく、自分のお気に入りの手本をいくつか準備してローテーションしながら練習していくのも良い方法です。
様々な種類のお手本から学ぶと、一つの手本だけでは分からなかった気づきがあったり、逆に別の手本で練習したときに、今まで習ったことを生かすことができたりします。
このようにして練習を重ねていくと自然と字に対する審美眼やスキルが備わってきます。
また、そうすることで結果的に「他の人とは被らない字」が出来上がってきます。
個性は狙って出す必要はなく、自分の求める方向へ突き進む中で、不要なものをそぎ落としていくうちに現れてくるものなのです。
④綺麗な字はクセのない字
「シンプル イズ ベスト」という言葉がありますが、字もクセがない方が好まれる傾向にあります。
例えば、有名な書道の古典作品に虞世南(ぐせいなん)の「孔子廟堂碑(こうしびょうどうひ)」という作品があります。
この作品は楷書の最高傑作の1つになっています。
実際に調べていただくと分かると思うのですが、クセがなくさっぱりとした書風です。
「どんな特徴がありますか?」と聞かれても、ぱっと見で目立つ特徴を見つけるのは難しいです。
そのくらいクセがないです。
それと同時に「均衡・上品・清廉」という印象も与えています。
さらに、余白の明るさ、線1本1本の柔らかさなどが字の美しさを際立たせています。
ここまでの字が書けると、「正統派」かつ「個性的」です。
恐らく、ここまで洗練された字を書ける人は多くはいないでしょう。
このように、個性はその場限りの思い付きで出すというよりかは、自分の感性を磨き上げた先に現れるものなのです。
⑤字の美しさは書道の古典作品から学ぼう
字の練習を始めたばかりの方は、「綺麗な字」がどういうものか漠然としているかもしれませんね。
自分の審美眼が養われていない段階で、お手本を選ぼうとするとなかなか決められない可能性もあります。
そこで、「美」の基準で参考としていただきたいのが書道の古典作品です。
先程挙げた「孔子廟堂碑」もそうですが、欧陽詢(おうようじゅん)の「九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)」や褚遂良(ちょすいりょう)の「雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)」も楷書の最高傑作です。
つまり、ペン字もこれらの字形に近いものを選べばハズレはありません。
これ以外にも書道の古典作品はいくらでもあるので、自分の心が惹かれる字を探してみましょう。
⑥まとめ
以上、「字が綺麗になると自分の個性がなくなる?!(本物の個性とは何か?)」というテーマでお伝えさせていただきました。
個性は意識せずとも、先人たちの知恵や技術を自分の中に取り入れながら、開拓していくことでおのずと湧き出るものなので、心配する必要はありません。
むしろ、何も知らないのに我流に走ってしまうことの方が問題です。
字はあくまでも相手に読んでもらうものです。
読み手にとって優しい字を書くことを念頭において練習していきましょう!
それでは、今回はこの辺で(^_^)/~